おりきんばっちゃん

おりきんばっちゃん　どけ行くかんた　　目ぐすいびんば　さげて
　　つっくるびーて　洟（はな）たれて
　　私しゃ　通り小路（とおいくーじ）のぇ　黒田さんへ　目の養生
　　いつからや　　おとちぃから
　　そりゃまた　きつかない
　　とこ　電信柱に　づくにゅうどんば　打ったくらんごとない

おりきんばっちゃん　どけ行くかんた　しっきれジョウリひゃーて
　　じんぱちがさどみゃ　ひっさげて
　　私しゃ　娘がえ　田植えがせーに行きよったい
　　何で行く　　あゆーでさい
　　そりゃまた　きつかない
　　トイコのふしどめゃ　しーちかれんごとない

おりきんばっちゃん　どけ行くかんた　紋付はおりどんば着こんで
　　重箱どんば　ひっさげて
　　おどみゃ　とない村さい　嫁ご所望に行きよったい
　　なんで行く　　馬車で行く
　　そりゃまた　お目出たかない
　　とことんと　づくにゅーどんば　ひっさげて　もろーておいでんさい

おりきんばっちゃん　どけ行くかんた　一升樽さげて
　　鯛の魚(ちゃーのいお）どみゃ　ひっかかえ
　　おどみゃ　嫁ごん在所（じゃーご）さい　初孫抱きや　行きよったい
　　どっちやったかん　　さげて出らしたばい
　　そりゃまた　よござしたのまい
　　とこ　骨病みどんば　うっちんせんごと　うじゃーてこんかんた

おりきんばっちゃん　どけ行くかんた　お数珠どんば　さげて
　　新し下駄どみゃ　ひっぴゃーて
　　私しゃ　願正寺さんに　講みゃーいに　行きよったい
　　なんの講や　　お彼岸さい
　　そりゃまた危篤たい
　　とこ　お御堂前の　石段々で　ひっころばんごとない

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おりきんばっちゃん　どけ行くかんた　よそ行ききもんば　着こんで
　　おしろいどま　ぬたくって
　　私しゃ　与賀ん馬場の鬼楽座に　歌舞伎見ぎゃ
　　一人（ひとい）でや　　娘とさい
　　そりゃまた　豪勢かない
　　とこ　大根役者に見とれとっぎー　巾着すらるっばい